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 坂井さんがシャクナゲを選んだのには別の理由もありました。自然豊かな浅間山のふもとにあるアララギ園では、時々、アララギが、カモシカや猪に食べられてしまうという被害があったのです。けれど、シャクナゲには毒があるので、動物に食べられる心配がありません。

 種は、山に生えるシャクナゲから採ってきました。シャクナゲは、100グラムの実の中に72万粒もの種があるので、種に困ることはありませんでした。しかし、種が多いということは、それだけ成長する確率が少ないということです。種からシャクナゲを育てることは、困難の連続でした。

 シャクナゲは小さいときには、日影を好む植物です。
 種からできた、30万本のシャクナゲの苗を育てるには、日影が必要でした。

 まずは、2メートルほどの柱で畑を囲って、上にシートをかぶせてみました。けれど、風が強くてシートはすぐにはがれてしまいます。今度はビニールハウスにして被いをしました。しかし、浅間山の強風は、ビニールハウスをも吹き飛ばしてしまうのです。次に、飛ばないように工夫したシートをかぶせたものの、黒いシートを使った為、夏には、高温になりすぎて苗が枯れてしまいます。



 冬は冬で、寒さの厳しい浅間山山麓では、連日のように霜柱が立ちます。霜柱は土を持ち上げてしまうので、土と一緒に苗が持ち上がり、強風に吹かれてころがっていってしまうのです。藁をかけても効果はなく、春になると、そこら中にころがっている苗をひろって、また植えるという地道な作業を続けるしかありませんでした。

 何しろ、他にシャクナゲを育てている人がいないので、何もかも自分で試していくしかありません。当時を思いだして坂井さんは言います。

「お金はかかるし、シャクナゲは病気になるし、病気の原因もわからない。もう、シャクナゲじゃダメなんかなぁって、何度も思った」

 そんなある日の事、坂井さんの悩みを、ある植物が解決してくれたのです。

 畑を見に行った坂井さんは、五葉松の木陰に植えられ、ビニールの覆いが届かなかった苗に目を留めました。見比べてみると、木陰の苗はビニールに覆われている苗よりも、成長が良かったのです。

 今まで、どうやって日陰を作ろうかと考えていた坂井さんでしたが、山の中に育ったシャクナゲは、人が覆いなんてかけなくても、勝手に育ったのです。ビニールに守られるよりも、自然の状態に置かれた方がシャクナゲも育つはず。そう思った坂井さんは、たまたま坂井さんの土地に生えていた五葉松を、シャクナゲの苗の間に、植替えてゆきました。すると、葉の多い五葉松は、どんな風にもびくともしない木陰を作ったのです。



 夏の間、日陰で育てたシャクナゲの苗は、冬の直射日光にも弱いのですが、常緑樹の五葉松は、冬でも日陰を作ってくれます。その上、冬の霜柱も防いでくれたのでした。さらに幸運なことに、松の葉には、落ち葉が腐るときに土壌を酸性にするという働きがあります。シャクナゲは酸性の土を好むのです。

「カラ松でも土を酸性にするんだが、カラ松は、少ししか酸性にしてくれないんだ。けど、五葉松はすごく酸性にしてくれる。まぁ、これは後から学者さんから聞いてわかった事なんだけど」

坂井さんは照れくさそうに言いました。