電気通信大学菅平宇宙電波観測所 |
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電気通信大学菅平宇宙電波観測所電波環境の良い菅平高原は、世界的にもよく知られている宇宙電波の観測地点。 無料(要予約) http://ssro.ee.uec.ac.jp/index_j.html この観測所は昭和43年12月に設立され、現在学部附属教育研究施設として、宇宙空間および地球惑星系の電磁気現象の観測的研究ならびに学生教育を標榜して活動しています。施設としては、ラグビーやスキー場で有名な長野県上田市菅平高原にある面積20,513m2の敷地内に、鉄筋コンクリート3階建て(639m2)の研究・観測棟ならびに同2階建て(841m2)の宿泊棟を有しています。また、調布キャンパスに短波送信局JG2XAを開設し、24時間運用を行っています。 所長 教授柳澤正久 専任所員 准教授冨澤一郎 兼任所員 教授4名准教授4名助教1名技術職員2名 386-2204 長野県上田市菅平高原1223 電話/FAX 0268-74-2211 菅平宇宙電波観測所の主な活動項目地殻変動に伴って発生する電磁界変動の研究超高層プラズマ波動の発生・伝搬の研究 電磁波逆変換問題(方探,電離層計算機トモグラフィ,合成開口レーダ)に関する研究 宇宙からの地球環境計測に関する研究 伝送線路と外来電磁波との結合の研究 太陽風−地球磁気圏相互作用に関する研究 太陽系の生成に関する研究 大気重力波の電離圏応答の研究 磁気変動のHFD応答の研究 電離圏全電子数のGPS観測に関する研究 高性能無線ネットワーク構成法に関する研究 ワイヤレス情報伝送技術に関する研究 惑星間空間電波星シンチレーションを利用した太陽風の観測(名古屋大学太陽地球環境研究所との共同研究) 人工衛星追尾・受信システムの開発と学生教育 以下、パンフレットより(1)短波および測位衛星利用による電離圏擾乱の観測研究最近は、クルマに搭載されるナビゲーション装置の中心であるGPS(Global Positioning Systemの略語)は、高度約20,000kmの円軌道を飛ぶ全部で24個の人工衛星から成るシステムです。この位置決定精度は、衛星から地表までの伝搬路上に存在する電離層電子密度が時々刻々変動することにより、大きな影響を受けています。この様な電離圏擾乱の強度・発生・伝搬・スケールについて、調布電通大調布キャンパスから送信する短波帯電波(JG2XA局;5.006及び8.006MHz)の時間変動観測、GPS、MTSAT、INMARSATから送信されている衛星測位電波の強度シンチレーション観測、およびGPSから送信されている2周波間の位相差による全電子数観測、から調べています。 右の図は、2004年12月26日のスマトラ沖地震の地震波が日本付近に到達し、それによる大気振動が電離層高度(200〜300km)まで到達して、電子密度の擾乱を引き起こしているときの短波帯ドップラ観測データです。電離圏擾乱が大気の変動現象と密接に関連していることの良い例です。このように、汎世界的規模から局地的「電磁圏擾乱」のモニターとして、菅平宇宙電波観測所の多様な観測の重要性が増しています。 (2)地殻変動に伴う電磁放射の観測研究 阪神大震災を招いた兵庫県南部地震(1995年1月17日5時47分JST発生)に際して、京都大学の尾池和夫教授が実はその前兆として電波の異常放射を捉えていたという報道に接した方は少なくないことでしょう。傾斜計をはじめとする正統派の観測装置にかかる地震前の異常現象も“そういえば前兆であったかもしれない”という、いわば“後の祭り”に属する話は今まで山のように積み重ねられています。「地震予知」は,しかし未だ解決されない大問題として懸案のままであるのは周知のとおりです。 本研究は、前所長芳野赳夫名誉教授を中心として、当観測所で1980年に開始したロシアとの共同研究に端を発しています。この研究に引き続き、日本での地震電磁放射の先駆的研究を数多く成し遂げてきました。さらに、本観測所の専任助教授冨澤一郎氏らは,ULFからLF帯にかけての自然電磁界を,EMCの見地より主に観測的手段により追求してきました。すなわち、菅平宇宙電波観測所でこの周波数領域の電界強度スペクトルを取り、人工雑音および空電雑音の隙間を丹念に探した末に,36Hzと1.525kHz(帯域幅は各々3と2Hz)の2周波を選んで関東一円に展開した菅平を含む多点観測網により1980年代の後半から電界強度のルーチン連続観測を続けてきました。 取得データを気象庁の地震、気象データと突き合わせる地味な作業を続けた結果も、最近では後の祭りには違いないが、地震の前兆とおぼしき電磁放射を数例見い出すことに成功しています。また、兵庫県南部地震時には、地震発生に伴う震央部からと思われる電磁放射例も報告しています。このような事例を積み重ねることも大切であるが、地中の岩石が破砕するときの電磁放射と伝搬の機構を追求するとともに、受信確率の最尤推定や観測の信頼性の問題を情報理論的な見地から順次固めていくことが今後の課題であると考えられます。 (3)太陽風の観測研究 太陽コロナの100万度を越す高温のために、太陽自身の強大な重力を振り切って惑星間空間に流れ出す秒速300-700kmに達するプラズマ流は「太陽風」とよばれています。遠宇宙にあるクエーサーや電波星(銀河)などからの電波がこの太陽風の中を通過するときプラズマ粒子に散乱されて“またたく” 現象を惑星間空間シンチレーションといいます。 このシンチレーションを地上の複数の観測点で測ると太陽風の動きに伴ってそのパターンの移動が検出できるので、太陽風自身の吹く方向や速さが求められます。現在観測点は豊川、富士嶺、上松、そして菅平に設けられており、この世界的に優れた観測網からは、名古屋大学太陽地球環境研究所の小島正宜教授を中心にして貴重なデータを供給し続けています。菅平宇宙電波観測所はこの一翼を担う役目を果たしています。 本観測所の見学者は敷地に入ってすぐに目につく東西長74m、南北幅27mの非対称円筒形パラボラアンテナの偉容に気付くはずです。これが現在稼動中の中心周波数327MHzの電波星受信用のアンテナです。受信装置はすべて自動化されていて、通信回線を通じて遠隔制御と監視が行われています。 太陽風の立体構造が太陽黒点出現の規模と位置などの関数としてどのように変化しているかを長期にわたって観測し、その物理的メカニズムを明らかにすること、さらには太陽-地球間で太陽から遠いほうが近くよりも風速が大きいことから必然的に生じる「太陽風加速の謎」を解明することが将来に残された課題です。 |
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