はじめに 発掘誌 文化と自然1 文化と自然2 文化と自然3 文化と自然4 風土博物館
■文化と自然2

028.産馬の業
029.浅間山溶岩樹型
030.大笹駅浅間碑
031.万座温泉事始め
032.風土博物館の構想
033.小串鉱山探訪の記
034.中居屋重兵衛
035.鹿沢温泉繁盛記
036.鬼押出しの溶岩流
037.湯の丸レンゲツツジ群落
038.盛だった村芝居
039.無量院の五輪塔
040.抜け道の碑
041.華童子げどうじの宮跡
042.歴史の道「毛無道」
043.円通殿
044.今宮白山権現のこと
045.芭蕉の句碑
046.今井東平遺跡出土の土偶
047.延命寺の碑
048.田代地区の両墓制
049.ホタルのひかり
050.『片栗粉』の商標
051.帰ってきた小仏像
052.万座温泉の『礫石経』
053.東平遺跡の敷石住居跡
054.浅間山について

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049.ホタルのひかり

 中国の昔話に「車胤という青年がいた。彼は、家が貧しく灯油を買うことができなかった。そこで、ホタルを集めて、その光で勉強し、やがて、出世することができた。」とある。卒業式に欠くことのできない「蛍のひかり」は、この故事に基づいて明治初年に作詩され、スコットランドの民謡の曲にのせたものと言う。

 日本でも古くから、ホタルは「…玉梓の使の言えば蛍成ほのかに聞きて…」など『万葉集』をはじめ、数多くの詩歌に詠まれた。また、近年では「蛍の宿」など、小学唱歌にも採用され、ホタルは初夏の宵の風物詩であった。

 ホタルは、ホタル科に属する甲虫類の中で、特に発光する種類を示すが、一般的には、ゲンジボタル、ヘイケボタルを言う。幼虫は水中に棲み、カワニナなどを食べて成長し、初夏に成虫となる。成虫は、主に夜間に明滅発光を繰り返しながら、近く遠く低く高く、音もなく乱れ飛ぶのである。

 その妖しげな仄(ほの)かな光は、細胞内にあるルシフェリンなどの発光物質が、酸素と化合することによるとされる。一般的に雄は雌より明るく、そして著しく明滅し、その回数は、ゲンジボタルが1分間に70〜80回、ヘイケボタルは120回前後とされる。

 ホタルは、かつて嬬恋の各地にみられ、その名所とされる所さえあった。薄暗がりの中を、兄弟姉妹そして遊び仲間で、「ホーホー蛍来い、こっちの水は甘いぞ、あっちの水は苦いぞ、ホーホー蛍来い」と連呼した“蛍狩り”は今に懐かしい。

 そのホタルが、私たちの周囲から遠ざかって久しい。こうした中にあって「芦生田ホタルの会(代表小池茂治氏)」は、かつてホタルの名所であった芦生田集落の東外れ、エェジリ地域において、絶滅に瀕しているホタルを保護し、増殖しようとする意義ある活動を、平成元年以降地道に続けている。

 今年もまた、エェジリの「ホタルの里」では、6月〜8月にかけての夕闇に、神秘的な光を明滅させながら、ホタルが飛び交うのである。