はじめに 小論集 文化と自然1 文化と自然2 文化と自然3 文化と自然4 風土博物館
■風土博物館

1.序文
2.嬬恋村風土博物館の提案
3.嬬恋村整備構想

4.鎌原地区整備構想
  4-4.埋没村落整備構想
     @鎌原観音堂石段
     A延命寺跡
     B十日ノ窪民家跡
  4-5環境整備構想
     @全体計画
     A街並
     B延命寺跡周辺
     C資料館周辺

5.推進計画
6.調査計画

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2.嬬恋村風土博物館の提案

 2−1理念

 嬬恋村は、かつて街道の要衝として栄えた宿場街という文化的土壌にあり、豊かな自然を控え、また、浅間山の噴火という特殊な歴史的背景をもっている。

 しかし、社会環境の変化とともに宿場街としての機能も失われ、現在では大企業による観光開発や、温泉・スキー場などが主な集客要素となっている。
 ここで、村内の生活環境や文化的高揚を目指す見地からすれば、単一的な観光化は避けるべきであり、文化遺産・自然環境・産業等を一体的に連携して、公開する住民参加型の組織構造が望まれるのではなかろうか。

 この構造を具体化するものとして、風土博物館の理念が有効であろう。風土博物館の先駆は、博物館学で言うエコミュージアム(生活・環境博物館)で、住民自身が企画者であり、研究者であり、運営者であり、観察者である点で、従来の野外博物館とは大きく異なる。

 エコミュージアムは、「ある一定の文北圏を構成ずる地域社会の人々の生活と、そこの自然及び社会環境の発展過程を史的に探究し、自然及び文化遺産を現地において保存し、育成し、展示することを通して当該地域社会の発展に寄与することを目的とする創造的野外博物館である(Museum Data 1988,4 新井重三)と紹介されており、風土博物館の基本理念と軌を一にしている。ただエコミュージアムが現在をテーマとするのに対し、ここで述べるものは風土に係る歴史的環境を主体としている。日本の各地では、特徴的な歴史的環境が、画一的な近代化に埋没しつっある状況が多くみられる。例えば嬬恋村は、関東的特徴を示すと同時に、中部高地の影響を受けた縄文土器。大笹の関所に象徴される上州と信州を結ぶ往来。埋没村落「鎌原村」の文化的特性。全国的に著名なキャベツ栽培。そして中居屋重兵衛の活躍など『他地域との交流』が特徴のひとつとして挙げられるが、これも現在直接的に実感できるものは少ない。

 このような歴史的背景を顕在化させることで地域の特性を引き出すことを主眼とするのである。

 具体的には、その地域の時代性を明確にし、それをテーマとして埋蔵文化財の整備や、その他風土に係る要素の環境整備を行うことを意味している。
 風土とは、文化・経済・気象・地勢等、人の生活に係る全ての要素から形成される環境である。従って、風土博物館では学際的な領域を扱う。
 整備(調査・研究・展示)要素は、村内に所在する文化財(埋蔵文化財や名勝・天然記念物・美術工芸品・建造物・民俗文化財)や自然環境、産業(キャベツ畑)、観光(温泉・スキー場)等が対象となり得る。
 これら整備要素の全てに時代性を追求できるものではないが、環境整備の根底の方針として歴史的見地を導入することで、各々の方向性の統一を図るものである。
 整備要素は、各々現地に於て保存・育成して展示を行う。また、その研究・運営を所有者・管理者が行うことで、自己の再認識や地域の共通意識・共同体の形成が促されるであろう。
 この各々の整備要素を総合するものとして、中核施設が不可欠であろう。中核施設では、風土博物館の本部として、来訪者に総合的な案内をする施設と、各研究・運営者の指導を行う組織が必要である。


 2-2:構成
 (整備要素の構成図 省略)

■一つの文化圏をなす地域
 産業や自然環境あるいは歴史背景や信仰が共通し、同一の風土に根ざした生活を展開する地理的範囲。

■整備要素
 文化遺産や自然環境・産業あるいは生活自体を風土の構成要素として促え、それら自体を調査・研究し、公開・展示する。

■中核施設
 地域全体の風土博物館本部として調査・研究・展示を行うと共に、地域住民の学習活動の場となり、来訪者には、整備要素の紹介を行う。また、風土博物館全体の運営の中心ともなる。

■運営
 風土の構成要素には必ず住民が係っており、その企画・運営にも直接参加する。


2-3 体制

(図 省略)

 この計画は、単に教育委員会だけが事業を推進するものではなく、村づくりの根本施策として推進しなければならない性質のものである。よって関係各課を横つなぎする体制が必要である。
 またそれは営林署などの国の機関や農協、民間団体、民間企業との協力とその調整を行なう組織とし、風土博物館本部がその役割を担うことが望ましい。