はじめに 小論集 文化と自然1 文化と自然2 文化と自然3 文化と自然4 風土博物館
■風土博物館

1.序文
2.嬬恋村風土博物館の提案
3.嬬恋村整備構想

4.鎌原地区整備構想
  4-4.埋没村落整備構想
     @鎌原観音堂石段
     A延命寺跡
     B十日ノ窪民家跡
  4-5環境整備構想
     @全体計画
     A街並
     B延命寺跡周辺
     C資料館周辺

5.推進計画
6.調査計画

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3.嬬恋村整備構想

 3−1 整備要素

 風土博物館の視点から、嬬恋村の整備要素を概観する。
 嬬恋村の中心的ゾーンは、鎌原地区(文化)・大前地区(行政)、三原地区(商業)に集約されており、各々国道や計画道路等によって結ばれている。

 鎌原地区は、文化財的価値や現在の位置付けからして、嬬恋村郷土博物館における中核施設の位置として有効であり、集中的に整備・公開すべき条件も備えているこの地区と、行政、行政、商業の中心とが約2q以内に位置することも良好な条件である。
 次に、嬬恋村の中心を東西に走る、国道144号線(真田街道)沿いには、整備効果の期待される宿場街や農村集落が分布している。また、温泉も所在し、宿泊施設として有効である。
 村域を縦断する有料道路、浅間・白根火山ルートの南・北端には、それぞれ主要な集客要素である、浅間山・鬼押出し園と万座温泉・スキー場が所在している。この南北の山岳と真田街道で挾まれる高原地域には、広大な農場が展開し、中腹域にスキー場・ゴルフ場・国民休暇村などの観光要素が点在している。さらに山岳地域に到ると、浅間山溶岩樹型や湯の丸レンゲツツジ群落等の天然記念物・ミヤマモンキチョウなど貴重な動植物といった豊富な自然環境を有している。
 これらの中で、重点的に整備すべき要素のひとつとして、大笹の宿場街が挙げられる。村のほぼ中央、現在は国道になっている真田街道の関所が設けられた大笹は、上州と信州の接点として発展し、交易も盛んであった。鎌原地区と比較してみても、街道の景色から民家の一軒一軒にいたるまで特徴的な風情を現している。
 また、今井地区、干俣地区等も農村集落として魅力的であり、景観整備や歩道整備が望まれる。

嬬恋村指定文化財一覧表(別表)


3−2 観察者の利用範囲

 嬬恋村風土博物館の観察者は、村民・個人グループ・集団に大別される。この設定によって、公開体制が大きく異なる。
 自然環境や生産的要素・農村集落は、その保存・育成を最優先すべきであるので、自然環境の観光地化されている一部を除き、集団での来訪は中核施設と重点整備地区、商業・観光的要素に限定すべきであろう。また、村民の生活要素も公開の対象として考えられるが、来訪者に対しては、個人グループ祭礼等に参加・観察する程度にとどめ、むしろ、村民相互の交流を重視すべきであろう。


3−3 各地域の整備要素

[鎌原地区]

鎌原地区遠景:鎌原天明3年浅間山の噴火により村のほぼ全域が埋没した鎌原地区はその後再興された。

鎌原観音堂:天明3年の噴火の際にも高台にあったために埋没しなかった観音堂。しかし石段は上部15段を残して埋没した。

鎌原地区の民家:街道沿いの民家はほとんど妻側が道に面する造りで地割りは街道に直角に構成している。板葺きであったと思われる屋根が今ではほとんどトタンで覆われている。

[大笹地区の民家]

大笹地区は街道の宿場街として発展し、現在も国道沿いには当時の街並を思わせる民家が多く残る。

大笹民家1:街道に面して平入り11間の民家で、大笹の宿場街でも最大規模の宿であったと思われる。

大笹民家2:妻側が街道に面している出桁造りの民家で上階では養蚕を営んでいた。

大笹民家3:県道大笹・北軽井沢線(沓掛街道)沿いに同形式の民家が並ぶ。


[大笹地区の文化財]

 宿場として繁栄していた大笹は、関所跡や石造物など多くの文化財が点在している。

道標:大笹の鬼押出し口にある道標で、沓掛の“沓”や街道の“街”の文字に当て字を使っているのが特徴。

大笹関所跡:江戸時代に上州と信州を結ぶ交通の要衝を取り締まった関所跡。

用水路の欄干:宿場街の街道に流れていた用水路を渡るために設けられた橋の欄干。現在は石段として利用されている。


[その他の地区]

 鎌原・大笹地区以外の集落にも各々特色のある風景や民家があり、嬬恋村風土博物館の整備要素となりうる文化財や生活様式が存在している。

今井地区:今井川・温井川に沿って田畑が展開し、それを見下ろすように宝篋印塔が建つ。付近には縄文時代の遺跡群がある。

干俣地区:干俣川を中心とする山合の集落であり標高1,000〜1,100
メートルに位置する。妻側に特色のある倉などがある。

田代地区:特色ある民家はあまり残っていないが、神社や石造物などが集落に点在する。

[天然記念物など]

 嬬恋村の自然環境は非常に豊かであり、写真の他にも国指定の天然記念物であるレンゲツツジが湯の丸山麓に群落し、ニホンカモシカが生息するなど貴重な動植物も多い。

石樋:戸田沢の川床を形成する300mに及ぶ安山岩床で、石でできた樋にたとえて石樋と名付けられた。

溶岩樹型:浅間山の噴火によってできたもので、国指定の特別天然記念物である。

鬼押出し:天明3年の浅間山噴火の際に流失した溶岩であり、観光地として有名。


[史跡・名勝]
 温泉引き湯道跡:鬼押出しの溶岩の下から湧き出した温泉を、大笹宿まで10Km余り引いた湯道跡。

キャベツ畑:嬬恋村の象徴の一つである高原野菜。夏秋産キャベツの生産量は全国一である。開墾された広大な畑の風景は嬬恋村の名所のひとつといえる。

鎌原城址:鎌原地区から沢を距てた西方の台地にあり、応永4年(1397)に築城され、280余年間、鎌原氏八代の居城であったと伝えている。